「グレリン」が指定難病「レット症候群」の治療に症状を改善する効果あり?

小児期に発症し、運動能力や知能に障害が生じる指定難病「レット症候群」の治療について、体内で生成されるホルモンの一種「グレリン」に症状を改善する効果があることが、聖マリア病院(福岡県久留米市)と久留米大(同)グループの研究で分かった。一部患者への投与で体の震えやこわばりなどの症状が改善されており、新たな治療薬の開発が期待される。

 同グループが、国際的な学術機関「世界神経学連合」の機関誌(電子版)で発表した。レット症候群は女児に多く、1歳ごろから障害が現れ、徐々に進行する神経疾患。遺伝子の変異が脳や神経などに作用して発症すると考えられており、自閉症やてんかんを伴うこともある。国内患者は推計4千~5千人。リハビリなどの対症療法以外に効果的な治療法は見つかっていないという。

 グレリンは主に胃で分泌され、体内で成長ホルモンの分泌を促すなどの役割を担う。別の研究で、レット症候群の患者はグレリンの血中濃度が低いことが分かっている。

 そこで研究チームは、2015年から同意を得た10~30代のレット症候群の患者4人にグレリンを静脈注射で投与。2年以上と10カ月以上投与した2人の患者について、体のこわばりや震え、睡眠障害などの症状に改善があった。2人は現在も投与を続けており、副作用はほぼないという。

 聖マリア病院の松石豊次郎レット症候群研究センター長と久留米大小児科の弓削康太郎助教は「これまで進行する症状を食い止めるのが難しかった。待ち望む患者や、家族のためにグレリンを用いた治療薬開発につなげたい」と話している。
■効果の検証など壁多く 厚生労働省レット症候群研究班の伊藤雅之班長の話
 臨床現場の治療に生かすには、基礎研究の積み重ねや効果の検証などまだ多くの壁がある。成果がより洗練された形で近い将来患者さんの元に届くことを期待している。

★グレリン ぐれりんghrelin
胃などから分泌されるホルモンの一種。下垂体に働いて成長ホルモンの分泌を促進し、視床下部に働いて食欲を増進させる。また、循環器系やエネルギー代謝にも機能することが明らかになり、心機能の改善やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の栄養障害改善などに効果が期待されている。


グレリンは主に胃から分泌され、強力な成長ホルモン分泌促進作用などを有するペプチドホルモン。1999年12月、国立循環器病センター研究所生化学部の寒川賢治博士らが、ラットの胃から単離・構造決定に成功した。


★レット症候群とは
レット症候群(レットしょうこうぐん、英語: Rett syndrome)とは、ほとんど女児に起こる進行性の神経疾患であり、知能や言語・運動能力が遅れ、小さな手足や、常に手をもむような動作や、手をたたいたり、手を口に入れたりなどの動作を繰り返すことが特徴である。
1966年にウィーンの小児神経科の医師であるアンドレアス・レット (en:Andreas Rett) によって最初の症例が発表された神経疾患で、彼の名を取って名付けられた。英語ではRTTとも略される。日本では小児慢性特定疾患に指定されている。

レット症候群は知能や言語・運動能力が遅れ、常に手をもむような動作や、手をたたいたり、手を口に入れたりなどの動作を繰り返すことが特徴です。 女児出生率一万から一万五千人に一人の発生率といわれ、生後六ヶ月から一年六ヶ月の頃に発症します。
現在、日本で推定5,000人程度の患者がいると言われています。しかし残念ながらレット症候群という患者が社会的に認知されていないため、幅広い人々から支援を受けることも難しいというのが現状です。



●症状
生後六ヶ月から一年六ヶ月の頃に発症するが、それまでの周産期や出産前後は一見正常である。兆候症状には認識の悪化や社会性に伴う問題を含み、後者は退化時期の間に見られる。児童期には体幹失調・脊椎変形・舞踏病様運動・てんかん発作が現れ、進行性。運動機能が崩壊する。精神遅滞は重度。英語版の記述によれば、80%以上がてんかん等の突発的発作を持ち、50%あまりが歩行困難。この障害はアンジェルマン症候群、脳性麻痺、自閉症と誤診されることもある。


●治療
遺伝子変異によって引き起こされる症候群であるため、根本的な治療法どころか、症状の進行を食い止める方法すら存在しない。各患者の症状に合わせて、対症療法を行う。マウスを用いた実験では、MECP2遺伝子を破壊するとレット症候群様の症状がみられるが、その後に正常なMECP2遺伝子を再導入することで症状の改善が見られた事から、遺伝子治療などが有効であると期待されるが、未だ基礎研究段階である。

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